文化財IPMサポート事業

文化財を虫害から守る
IPM管理サポート(美術館・博物館編)

従来、文化財の危害防止については様々な方法が用いられてきました。ただ、殆どの場合、それらは薬剤による駆除が中心で、防虫剤の交換や、化学ガス燻蒸及び消毒剤などでした。代表的な文化財燻蒸薬剤である「臭化メチル」はオゾン層を破壊する物質であることから2004年に全廃となり、文化財燻蒸における考え方が“駆除”するから“予防する”へと変化してきております。

IPMとは(Integrated Pest Management)総合的害虫管理といい、生物的、化学的、物理的な防除方法をうまく組み合わせ、経済的被害を生じるレベル以下に害虫個体群を減少させ、かつその低いレベルを維持させるための害虫個体群管理システムであり、欧米を中心にこの考え方が現在世界的に広まっています。

文化財分野における生物被害の防止対策

文化財分野における生物被害の防止対策

・回避・・・効果的な清掃とクリーニングによる虫・カビなどを誘うものを回避。
・遮断・・・害虫などが進入するルートの遮断。
・発見・・・トラップ等を使用して害虫等を早期発見、記録。
・対処・・・収蔵品・展示品に安全な方法で対処する。
・復帰・・・安全な空間に戻して復帰・これまでの対処を見直す。

基礎となる枠組みは「回避」と「遮断」です。この部分の重要性を理解して対策を行わないと次の「発見」や「対処」の段階に多大な労力がかかるばかりではなく、効果があがりません。
「発見」と「対処」は互いについになる行動で、「復帰」の過程は繰り返して対策がうまく働いているかを見直す段階です。

IPMに基づく防虫対策のご提案

管理内容はまず各箇所(部屋/展示室)に昆虫類生息調査用粘着トラップを配置し、定期的で継続的な調査を行うことにより、文化財害虫類の生息数推移を把握し、適切な対策を立案することが主体となります。

管理方法の打合せ
業務のお見積り等は、お気軽にお問い合わせ下さい。
名称 古文化財保存修理 (有)矢口浩悦庵
電話 075-254-6021
ファックス 075-254-6022
E-mail お問い合わせはこちら

主な管理内容

昆虫類調査
歩行性昆虫類生息状況把握のため、数十箇所に無誘引粘着トラップ:LCインジケーターを配置し、捕獲された虫の種類と数を調査する。
ゴキブリ用食毒剤配置点検
ゴキブリ対策として、ジェル状食毒剤を各所に配置し、主に文化財を加害するクロゴキブリ類を防除する。
防虫プレート配置
シミ対策として主にパナプレートまたはエコミューアプレート等の文化財用防虫剤を配置する。
畳防虫シート配置(※寺院・和室展示室等対象)
歩行性昆虫類全般の防除対策として畳下に専用防虫シートを設置し、床下からの侵入と潜伏を予防する。

IPMに基づく日常管理(文化財所有者様へ)

文化財の保存管理には、『日々の日常管理』が最も重要です。また、以下の事項を習慣的に行うことにより文化財における虫害を減らすことができます。

目視による点検
毎日、各部屋(展示ブース、宝物館、その他寺院内文化財展示場所等)について新たな食害が生じていないか注意深く点検してください。(各部屋、数10分でかまいません。)
日常清掃の実施
特に部屋の隅周りと畳の目地について、吸引掃除を十分に行い、潜伏している虫の餌となる有機物質(ゴミ)の除去を行って下さい。
温湿度を管理する
シミやチャタテムシは高湿度を好むため、室内の湿度が高くならないよう管理して下さい。(データロガーによる温湿度管理)
管理記録をつける
目視による点検結果や清掃実施状況、温湿度記録管理データなどの記録を行って下さい。(清掃中に見つけた虫などは記録し、関係者に回覧して下さい。)